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書評

2012年2月11日
研究者、その知られざる生態に迫る怪著


普通に暮らしていれば、ハカセなんて生き物にはめったにお目にかかれない。

ところが、私の職場の右隣りの席に某大学で助教を務めていた工学博士がやってきた。
彼は、酔っぱらって自転車で崖から落ち死にそうになったり、
勉強会で講師をするはずがなぜだかべろべろに泥酔して登場した挙句
自分がプログラムをしたロボットがサッカーをしている動画を
延々と投影しだして参加者をあんぐりとさせたり、
かと思うと寝ずにコードを書いてきたり、日曜日でも楽しそうにコードを書き続けていたり、
その生き様たるや「天晴」というか、常人には真似できない傾きっぷりだった。
彼が隣にいると、面白いんだけどまったく仕事が進まなかった。
と思うと自分の仕事に入り込み、そんなときにこちらが雑談トークを仕掛けるとナチュラルにスルー。

ハカセとはなんなんだ!?
隣の席にハカセが来て、それまでの価値観が崩されかかっているあなたに是非読んでもらいたいのが
研究者マンガ「ハカセといふ生物(いきもの)」


生命科学博士の北大路柿生を主人公とするこのエッセイ4コマ漫画。
まずお目にかからないハカセという生物の生態を知るには非常に参考になる。

ドラゴンボールの戦闘力みたいに、学会や論文誌での発表に基づいて
「インパクトファクター」という数字で研究者の業績を示したり。
理論がどんなにすごくても、作業はとことん地味だったり。
教授に理論で打ち負かされて泡吹いて失神する人がいたり。
博士号を取っても、決して輝かしい未来がまっているわけではなくて
ポスドク→助教→講師→准教授→教授なんて階段を登り詰められなければ(大学の場合)
高学歴ワーキングプアにもなりかねないみたい。
ひいい、厳しいよう。

彼らの地道な努力の積み重ね無しには、世の発展はあり得ないのだけれども、
全てのハカセが報われるわけでもないという事実。
相当腹が据わっていないと、選べない道。

本著は後半で、普段は温厚な北大路柿生の腹がいかに座っているのかという話になる。
軽快にしてシリアス。静かな炎。かっちょいい生き様だ。真似したいとは思わないけれども。

私は経営者という仕事は内田裕也並みにロックンロールだという確信があるのだけれど、
それに次いで、ハカセという生き方もロックなんじゃないかと、薄々感じていて、
この本を読んでその思いは増々強くなった。

冒頭で紹介した私の隣の席にいたハカセも、
ただの変態ではなくて、きっと限りなくロックンロールな人なのだろう。

そんな全てのハカセを知るために、そして彼らに敬意を表すために読みたい漫画だと思った。
身近にいるハカセを理解したい、普通のあなたにこそ読んでもらいたい本です。

技術評論社の池本さんからご献本いただきました。ありがとうございます。

追記<2012.2.13>
作者さんのブログに書評を取り上げていただきました!!
ハカセといふ生き物 書評5(Luye Huiziさん)
http://ameblo.jp/hakasetoiu-ikimono/entry-11162697031.html

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